兵庫県豊岡市にある「出石城(いずしじょう)」と「有子山城(ありこやまじょう)」は、歴史ファンや城跡巡り愛好家はもちろん、町歩きやグルメを楽しみたい旅行者にも人気の観光地です。
かつて但馬の政治・文化の中心地として栄えた出石の城下町には、白壁の町家や辰鼓楼などの歴史的建築が立ち並び、どこを切り取っても絵になる景色が広がります。
有子山城は標高321mの山頂に築かれた山城で、往時の石垣や天守台跡からは出石の町並みを一望できます。さらに、出石といえば名物「出石皿そば」。小皿に盛られたそばを何枚も楽しむ独特のスタイルは、訪れる人の胃袋も心も満たしてくれます。
この記事では、出石城・有子山城観光に便利な宿泊施設5選を紹介したうえで、歴史、見どころ、モデルコース、グルメ情報までを網羅。
これを読めば初めての出石旅行でも迷わず、効率よく楽しめること間違いなしです。
出石城・有子山城観光に便利なおすすめ宿泊施設5選
豊岡グリーンホテルモーリス
豊岡駅から徒歩約3分の好立地にあるビジネスホテル。客室は広めで、シンプルながらも落ち着いたインテリアと高品質なベッドで快適に過ごせます。朝食は和洋バイキングで、但馬の食材を使ったメニューも楽しめます。
出石城までのアクセス:豊岡駅から全但バスで約30分、出石営業所下車後徒歩5分。
周辺観光スポット:
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玄武洞公園(車で約15分)
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城崎温泉(電車とバスで約30分)
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コウノトリの郷公園(車で約10分)
Oホテル豊岡
JR豊岡駅直結という抜群のアクセスを誇るホテル。
雨の日でも濡れずにチェックインできるのが魅力です。客室は清潔感があり、機能的な設備と無料Wi-Fiを完備。朝食は和洋ビュッフェで、地元食材のパンやスープが人気。
出石城までのアクセス:駅から全但バス利用で約30分。
周辺観光スポット:
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城崎マリンワールド(車で約35分)
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日和山海岸(車で約30分)
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出石町内の皿そば名店(バスで約30分+徒歩)
Hotel IKUE 豊岡
落ち着いた雰囲気のシティホテルで、ビジネス・観光どちらにも対応可能。
館内はシンプルながら高級感があり、特にベッドの寝心地が評判です。
出石城までのアクセス:豊岡駅からバスで約30分、下車後徒歩5分。
周辺観光スポット:
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城崎温泉(バス・電車で約30分)
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玄武洞(車で約15分)
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出石永楽館(バスで約30分+徒歩)
ホテルシルク温泉やまびこ
出石町から少し足を延ばした日高町にある温泉宿。
シルクのような肌触りの温泉は美肌効果が期待され、旅の疲れを癒します。館内には大浴場・露天風呂があり、食事は但馬牛や地元野菜を使った会席料理。
出石城までのアクセス:車で約20分。
周辺観光スポット:
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阿瀬渓谷(車で約15分)
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城崎温泉(車で約35分)
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コウノトリの郷公園(車で約20分)
豊岡スカイホテル
豊岡駅から徒歩約7分。リーズナブルながら、快適なベッドと清潔な客室でコストパフォーマンスが高いホテルです。長
期滞在にも向いており、館内にコインランドリーや自販機も完備。
出石城までのアクセス:バスで約30分。
周辺観光スポット:
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城崎温泉(電車・バスで約30分)
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玄武洞公園(車で約15分)
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日高神鍋高原スキー場(車で約40分)
歴史
出石城のはじまりと小出氏の時代
出石城は、慶長9年(1604年)、小出吉英によって築かれた平山城です。
それ以前、出石の中心は有子山城で、戦国期に山名氏の拠点として栄えました。
しかし有子山城は標高321mの険しい山城で、戦国時代には防衛に優れていたものの、平和な江戸時代には登城の不便さが問題となりました。そこで、小出氏は城下町に近い有子山の麓に新たな城を築き、行政・政治の拠点を移したのです。
出石城は堀と石垣で防御を固めた堅牢な構造を持ち、背後の有子山城が万一の籠城地として機能しました。この“二重防御”が出石の安全を支えたのです。
城郭は南北に長く、本丸・二の丸・三の丸が階段状に配置され、城下町と一体となった作りでした。築城当時から城下には町割りが整備され、商家や職人町が形成されました。
今日、城跡には石垣や登城門、稲荷曲輪が残り、当時の面影を偲ばせます。
小出氏の治世は約3代続き、その後松平氏や仙石氏が城主となり、江戸期を通じて出石は但馬の政治・経済・文化の中心として栄え続けました。
有子山城が担った“山城”の防衛ライン
有子山城は天文年間(1532〜1555年)頃に山名祐豊によって築かれたとされる山城です。
山頂部に本丸を置き、その周囲に二の丸、三の丸、曲輪が階段状に広がる構造を持っています。標高321mという高さは、敵の接近を遠くから見張るのに最適で、城下町全体を見渡せる立地でした。
戦国期には但馬国内だけでなく、隣国の播磨・丹波・因幡からの侵攻にも備える重要な拠点でした。
山名氏は但馬守護として勢力を誇りましたが、織田信長の勢力拡大とともに衰退。1580年、羽柴秀吉の但馬攻めにより落城します。
その後は豊臣政権下の武将が在城し、やがて小出氏が領主となりました。
小出氏は江戸初期に麓へ出石城を築き、有子山城は詰城(緊急時の防御用城郭)として維持されます。
現地には大規模な石垣や土塁、虎口が残り、険しい山道を登った先には当時の防御思想が色濃く感じられる遺構が点在しています。
訪れると、戦国武将たちが命を懸けて守った山城の迫力と、出石の歴史的背景が立体的に理解できるでしょう。
近世城下町への移行と城の役割の変化
有子山城から出石城への移行は、単なる拠点移転ではなく、時代の変化を象徴する出来事でした。
戦国から江戸へと移るなか、領主に求められたのは防御力よりも行政・経済の運営力でした。山上にある有子山城は攻められにくい一方、普段の登城や物資運搬には不便でした。そのため、麓の平山城である出石城が築かれ、役所や城主邸宅が集約されました。これに伴い、城下町は碁盤の目のように整備され、商業や手工業が発展。
出石は「但馬の小京都」とも呼ばれる洗練された町並みを形成しました。
江戸時代には、藩校「弘道館」や芝居小屋「永楽館」など文化施設も整い、城は単なる軍事施設ではなく、文化・経済の中心として機能します。
幕末期には戊辰戦争への派兵なども行われましたが、明治の廃城令により出石城は破却され、石垣と門だけが残されました。
現在、城跡公園として整備され、桜や紅葉の名所としても親しまれています。
但馬と周辺大名・京とのつながり
出石城・有子山城は但馬国の政治拠点であると同時に、周辺大名や京の都との結びつきも深い場所でした。
戦国時代、但馬を支配した山名氏は室町幕府の管領職を務めた名家で、京に強い影響力を持っていました。有子山城はその防衛拠点として、播磨や丹波方面からの侵攻を防ぐ要衝だったのです。
江戸時代に入り、小出氏や仙石氏が城主となると、出石藩は参勤交代を通じて京や江戸と直結する存在になります。参勤交代の道中には、但馬から丹波を経由して京に至るルートが整備され、経済や文化の交流が活発化。
京の文化が町家や寺社、祭りなどに影響を与え、出石は和洋折衷の文化を取り入れた独自の町並みを築きました。現代でも、出石そばや伝統工芸品には京風の洗練さが感じられます。
このように、出石城と有子山城は単なる防衛施設にとどまらず、但馬と京をつなぐ文化と経済のハブとしても機能していたのです。
遺構の保全・復元と現地で見られる史料
出石城は廃城令によって多くの建物が失われましたが、近年の発掘調査や史料研究により、復元や保存活動が進められています。
登城門や隅櫓、石垣は当時の姿を伝える貴重な遺構で、訪れる人に城の構造や防御機能を実感させます。稲荷曲輪にある赤い鳥居群は、写真映えスポットとしても人気です。
有子山城も、石垣や虎口、曲輪跡が残り、山頂からは出石の町並みと遠くの山々まで見渡せる絶景が広がります。城跡周辺には案内板や模型、歴史解説が設置されており、当時の生活や戦術を学びながら散策できます。
また、出石町内の資料館や観光センターでは、城の絵図や古文書、刀剣などが展示され、城郭史の理解を深められます。
近年は地域ボランティアによるガイドツアーや、城跡を巡るイベントも行われ、歴史ファンだけでなく家族連れや外国人観光客にも人気です。
見どころ
登城門・本丸跡・稲荷曲輪の歩き方
出石城跡に足を踏み入れると、まず目に入るのが「登城門」。
復元された木造の門は、城下から本丸へと向かう入口であり、往時の威厳を感じさせます。門をくぐると石段が続き、その先に本丸跡があります。
本丸は現在広場になっており、周囲には石垣が残ります。春は桜が咲き誇り、秋は紅葉が彩ります。本丸からさらに奥へ進むと「稲荷曲輪」があり、朱塗りの鳥居が連なる光景はフォトスポットとしても人気です。
稲荷曲輪は城の守護神を祀る場所であり、戦国期には士気を高める場でもありました。
現在は観光客が自由に散策でき、出石の町並みを背景にした写真撮影に最適です。周辺にはベンチや案内板も整備され、ゆっくり歴史散策が楽しめます。
有子山城の天守台跡と石垣の魅力
有子山城の最大の見どころは、山頂にある天守台跡と周囲を囲む石垣です。標高321mの山頂まで約40〜50分の登山道を登る必要がありますが、その道中にも小規模な曲輪跡や土塁、石段などの遺構が点在しています。
山頂に到着すると、堅牢な石垣が今も形を保ち、当時の築城技術の高さを物語ります。天守台跡からは360度のパノラマが広がり、眼下には出石の城下町が一望。
春には桜、秋には紅葉、冬には雪景色が広がり、四季ごとに異なる絶景が楽しめます。
石垣は自然石を巧みに積み上げた野面積みで、戦国期の山城らしい迫力があります。
写真撮影はもちろん、じっくり石垣の積み方や虎口の配置を観察すると、当時の防御思想が見えてきます。山頂での休憩は絶景とともに特別な時間になるでしょう。
城下町スナップ:辰鼓楼・家並み・白壁
出石のシンボル的存在が「辰鼓楼(しんころう)」です。明治4年に建てられた時計台で、日本最古級といわれています。元々は藩士に時を知らせる太鼓を叩く楼閣として使われていましたが、のちに時計台に改修されました。
周囲には白壁の町家や格子戸の商家が軒を連ね、散策するだけで江戸時代にタイムスリップしたかのような気分になります。
写真愛好家にも人気で、早朝や夕方の柔らかな光に照らされる町並みは特に美しいです。
城跡から辰鼓楼までは徒歩約5分と近く、城下町観光とセットで楽しめます。また、商店街にはそば処や土産物店、カフェが点在しており、食べ歩きや休憩にも便利です。
日本最古級の芝居小屋「出石永楽館」
出石永楽館は明治34年に開館した芝居小屋で、日本で現存する最古級の木造芝居小屋です。一度は閉館しましたが、地元の熱意で修復され、平成20年に再開館。内部は花道や桟敷席、回り舞台などが当時のまま残されており、見学ツアーでは舞台裏や仕掛けも体験できます。
年間を通じて歌舞伎や落語、演劇などが上演され、文化の発信地としても活躍中です。出石城から徒歩約10分の距離にあり、町歩きの途中に立ち寄れます。芝居小屋の独特な雰囲気は、写真や動画では伝わりきらない臨場感があり、歴史と文化を肌で感じられる貴重なスポットです。
四季のハイライト(桜・新緑・紅葉・雪景色)
出石城跡と有子山城は四季折々の自然が楽しめます。
春は城跡の桜が一斉に咲き誇り、本丸跡や石段がピンク色に染まります。初夏の新緑は鮮やかで、登山道や城下町を爽やかに彩ります。
秋は紅葉が見事で、特に有子山城から見下ろす紅葉の海は圧巻。冬は雪化粧した城下町と山城が幻想的な景観を見せます。
四季の変化は観光の楽しみを倍増させるため、訪れる時期を変えることで何度でも新しい感動が味わえます。
モデルコース
半日でサクッと名所を制覇
午前中に出石城跡と城下町を散策し、辰鼓楼や永楽館を訪問。昼は出石皿そばを味わい、午後はお土産探しで締めくくる半日コースです。
移動が少なく効率的に回れるため、日帰り観光にも最適です。
たっぷり1日満喫プラン
朝から有子山城登山で絶景と山城遺構を堪能し、下山後に出石城跡や稲荷曲輪を散策。昼食は名物・出石皿そばを楽しみ、午後は城下町のカフェで休憩。
永楽館や資料館を見学し、夕方は辰鼓楼付近で写真撮影。夜は豊岡や近郊の宿で温泉や地元料理を味わう流れです。
1日使うことで歴史・自然・グルメがすべて満喫できます。
初心者・親子向け“ゆる登城”
小さな子ども連れや体力に自信がない方は、有子山城の登山は省略し、出石城跡と城下町散策に絞るコースがおすすめです。城跡は石段が多いですが、ゆっくり歩けば問題ありません。
町歩き中はカフェや甘味処で休憩を取りながら、辰鼓楼や永楽館を巡るのが理想です。
土産物店でそば関連のお菓子や陶器を選ぶのも楽しみのひとつ。
写真好きのための朝夕ゴールデンアワー散策
写真愛好家には、朝夕の光を活かした撮影プランが人気。
早朝、有子山城からの雲海や朝日に輝く町並みを撮影し、日中は城下町の白壁や石畳を散策。
夕方には辰鼓楼や稲荷曲輪で柔らかな夕陽を背景に撮影します。四季ごとの色彩変化も狙い目です。
雨でも楽しむ屋内中心プラン
天気が悪くても出石は楽しめます。
出石永楽館や資料館で歴史を学び、城下町のカフェやそば処でのんびり過ごすのがおすすめ。
土産物店や陶芸体験工房など屋内スポットを組み合わせれば、雨の日でも充実した時間が過ごせます。
グルメ・おみやげ・観光情報
出石皿そばの楽しみ方と人気店の選び方
出石皿そばは、小皿に盛られたそばを何枚も食べるスタイルが特徴。最初はつゆで、次に薬味や生卵、とろろを加えて味変を楽しみます。
人気店は週末混雑するため平日訪問がおすすめ。老舗から新鋭まで多数あるので、好みや雰囲気で選びましょう。
町家カフェ&甘味
城下町には古民家を改装したカフェが点在し、そば粉を使ったスイーツや和パフェが人気。そばソフトやそば団子など、散策途中の食べ歩きにもぴったり。
地酒・焼き菓子・器など、外さないおみやげ
出石は地酒や陶器が有名。
出石焼は白く美しい磁器で、お土産や記念品に最適。また、そばせんべいやそばクッキーなど、軽く持ち帰れる菓子類も豊富です。
年間イベントとおすすめの季節
春は桜まつり、秋は出石お城まつりが開催され、町全体が賑わいます。
冬は雪化粧が美しく、写真愛好家に人気。
アクセス・駐車場・所要時間・服装と持ち物
出石へは豊岡駅からバスで約30分。
町中に有料駐車場もあり。登山する場合は歩きやすい靴必須で、季節に応じた服装を。
まとめ
出石城・有子山城は、歴史的価値、城下町の美しさ、そしてグルメの魅力が揃った観光地です。
有子山城では戦国時代の息吹を感じ、出石城跡と町並みでは江戸情緒を堪能できます。さらに出石皿そばや地酒、伝統工芸など、訪れるたびに新しい発見があります。
アクセスも豊岡駅から良好で、周辺には魅力的な宿泊施設が揃っています。日帰りでも楽しめますが、宿に泊まって朝夕の景色や夜の町並みをゆっくり味わうのもおすすめです。